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バンクシアの響き

時代が急展開している今、
人間社会の新旧交代にまつわる出来事の本質をトータルヘルスデザイン 近藤洋一が考察します。

5月 つながり(2)

明治以来、西洋科学こそ文明開化の源泉であるという科学崇拝の傾向が日本中を覆い尽くし、現在に至っているようにみえます。微細なことが解明されるのは素晴らしいことだと思うのですが、何でも分けて考えるという風潮が強くなりすぎると、「木のことについては細かいことまでよく分かるが、全体としての森の姿が見えなくなる」傾向が強くなっていくように思われます。

つながり(1)」において、「切り離す働き」の強い科学思考が私たち現代人の常識の基礎を固めてしまったために、宇宙と大地、宇宙と人間、物質と精神など、これからの時代を創造していく上で大切なテーマを別々の事としてとらえる傾向が強くなってしまったのではないか、ということについて述べさせていただきました。

その一方で、「色即是空」を説く仏教への関心が高まりつつあるようですし、全体とのつながりを模索する動きも着実に現れているように思われます。宇宙と人間、宇宙と大地のつながりを謳いあげている金子みすゞの詩が静かな人気を呼んでいるのも、日本人の魂の目覚めといえるのかもしれません。

「蜂と神さま」
 蜂はお花のなかに、
 お花はお庭のなかに、
 お庭は土塀のなかに、
 土塀は町のなかに、
 町は日本のなかに、
 日本は世界のなかに、
 世界は神さまのなかに。
 そうして、そうして、神さまは、
 小ちゃな蜂のなかに。
          金子みすゞ

また、心の中に映るイメージと異界とのつながりを、「科学の眼と宗教の眼」を通して謳いあげた詩人・宮沢賢治も多くの現代人の心とつながり、金子みすゞと共に根強い人気を集めています。
宮沢賢治の詩からは私たちの近未来の姿が見えてくるように思われます。

宮沢賢治

東京・本郷で印刷の仕事をしていた宮沢賢治は、結核で床に臥している最愛の妹・トシの見舞いに花巻に駆けつけます。そこで「お兄ちゃん。私死ぬの?死ぬって怖いの?」と訴えられ、適切な言葉をかけることもできないまま、間もなくトシは亡くなります。

法華経に熱烈な信仰心をもつ賢治は自責の念を抱きつつ、トシの魂を求めて、青森・北海道から樺太(からふと)に渡ります。宗谷海峡を渡った賢治は、「オホーツク挽歌」「青森挽歌」をつくりました。来世の妹は現世との“つながり”のなかにあると思っていたようです。

極寒の地で強風にさらされながら、吹き飛ばされることもなく土につながり、懸命に咲いている名もない草の姿に心を打たれ、気をとり直して故郷・花巻に帰り、そこで農作業と詩作りに励み、未曾有の業績を残したと伝えられています。

宮沢賢治の座右の書が「法華経」と「化学本論」(東京大学・片山正夫教授著)というのも興味深いところです。岩手県花巻市の宮沢賢治記念館に展示されています。「化学本論」は当時の最先端の科学理論で、物質の基本構造は分子 ― 原子 ―電子という階層構造にあるということが強調されているそうです。

賢治の詩が語り継がれるのは、輪廻転生という宗教観と農業科学者としての自然認識との微妙な“つながり”の中に、宇宙の神秘が感じられるからなのかもしれません。