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バンクシアの響き

時代が急展開している今、
人間社会の新旧交代にまつわる出来事の本質をトータルヘルスデザイン 近藤洋一が考察します。

場の力


日本の独立を推進することのできない徳川幕府をなくして、天皇のもとに日本を統一し、生まれ変わる――明治維新というのは、不可能ともいえる大事業でした。

西郷隆盛のイノチと勝海舟のイノチが出会うことによって、大きなエネルギーをもつ「出会いの場」が生まれ、その「出会いの場」が力を生みだし、新しい時代を切り開いていったのです。二人の至誠があればこその明治維新だったのですね。

江戸時代末期には、西郷隆盛と勝海舟という二人の傑物を生み出す【場】が存在していたというわけです。どんな【場】だったのでしょうか?

西郷隆盛・勝海舟を育んだ【場】

幕末、ペリー来航を機に日本の歴史は大きな転換を遂げることになります。多くの人たちが、黒船の大きさに度肝を抜かれる中で、新しい日本の建設へ向けて大きな一歩を踏み出した人がおられます。――その一人が、薩摩藩藩主・島津斉彬でした。

幕末、薩摩藩は政治の世界だけではなく、現在の鹿児島市に、東洋初の近代洋式工場群「集成館」を創り上げ、大反射炉の建設に成功するなど、来るべき時代を切り開く科学技術の面においても大きな役割を果たしたのでした。

島津斉彬は、製鉄や造船など軍事産業だけではなく、薩摩切子などの美しいガラス製品や印刷、写真、食品など庶民の生活を潤いのあるものにする幅広い分野の技術開発に力を注ぎました。

また斉彬は、大きな船を建造するにあたって、外国船との区別を明確にするため、日本船には白地に赤の「日の丸」を掲げるように提案しました。「日本の将来は、古代から日本人が崇敬の念をもって接してきた太陽のようにありたいものだ」と考えたのでした。

そして幕府に献上するために鹿児島を出港した昇平丸に「日の丸」が掲げられたと伝えられています。

 西郷隆盛は、崇敬の念をもって、島津斉彬のことを「太陽のような人」と語っていたそうですが、当時の薩摩には、大きな「癒しの場」すなわち「人が伸び伸びと育つ場」が育まれていたのですね。

土佐藩を脱藩した坂本竜馬は江戸に出て、姉の乙女にあてた手紙に「……日本第一の人物・勝麟太郎(海舟)殿といふ人にでし(弟子)になり……」と記しているそうです。

 海舟の父・勝小吉は武士階級に属してはいるのですが、祖父の代までは町人階級でした。無役だった小吉は放蕩無頼極まりなく、遊んでばかりいたと伝えられています。

それに対し、海舟は遅まきながら出世して幕政にかかわったのですが、この父子はともすれば無頼の方に傾きがちであったと伝えられています。心を【無】にして遊ばせている、そんな父子だったのですね。

 小吉は、子どもの頃から剣術に秀でていて、学問に精を出すことはなかったそうです。

海舟も学問にとらわれることなく、剣術の修行に精を出していた、そんな一族だったのです。また勝父子は、当時の武士階級には珍しく経済に強く、勝小吉に至っては「損はしたことはなかった」と言うくらい、合理的な経営ができたということです。

勝海舟は、尊王だとか佐幕だとか世間が騒いでいるときに、「日本」という国の国民であることを強く意識し業務を遂行した人だったのです。

薩摩藩の名君・島津斉彬のもとで活躍した西郷隆盛と江戸城無血開城に導いた勝海舟を育んだ【場】が一つになって、新生日本が誕生したというわけです。

「出会いの場」が、イノチあふれる瑞々しい【場】を生み出し、次の時代を切り開いていく、これこそが時代を超えた真理と言ってよいと思います。

地球という【場】

私たちが向かうべき「新たな地平」のイメージをみんなで共有し、瑞々しい心をもち続けることが求められる時代がやってきているように思われます。

自然界には様々な法則があり、生きとし生けるすべてのものがその法則のもとで生かされています。私たちの体が秩序正しく機能しているのも、虚空からいただく【場】の働きによっていると考えることができます。

東洋では、生命の根本は【気】であると認識されていて、【気】の働きが弱まることによって病気が起こると考えられていたようです。【場】の歪みを元に戻すのが漢方、というイメージがありますが、医学発生当初は、東西とも病気の原因は臓器にあるのではなく、体内を巡る体液(気・血・水)の働きが弱まることにあると考えられていたそうです。

現代社会では、東洋医学は【場】を見る医学、西洋医学は【臓器】を見る医学、両者を統合するのがホリスティック医学というのが、一般的な見方と言ってよいと思います。

古来、東洋では、丹田、経絡、経穴(ツボ)、チャクラ、ナディ、クンダリーニなど生命エネルギーの流れ(自然治癒力)に関連した表現が日常的によく使われていますが、「美しく健やかに生きる」上で欠かせない要素として、これからクローズアップされることになるのではないでしょうか?

 大切なことは、人体を内臓器官の単なる集まりとして見ることではなく、一つの【場】を形成している生命体と認識し、【場】をととのえることによって自然治癒力を引き出すことだと言ってよいと思います。人体を整え、治すというプロセスは、機械を修理するような感覚で「治す」ということではないのですね。

このことは地球環境についてもいえるように思います。科学技術の進展に伴って地球環境が変質しつつありますが、地球の【場】の歪みが地球のイノチ、植物、動物、そして人間のイノチにも影響を及ぼし、全体として本来あるべき生命場のポテンシャルが低下しつつあるということ、そして本来あるべき自然治癒力が低下しつつあるということが、つとに指摘されています。

 地球は生きていくために、大地の内臓器官としての「鉱物資源」を必要としています。

地球は誕生以来、自らの生命力すなわち【場】をととのえ、今ある姿にまで成長してくるという長い歴史がありました。

人は、戦争や無意味な開発をやめて、地球の【場】を第一に考え、地球の自然治癒力を呼び覚ますための活動を推進する必要があると言われていますが、その通りですね。 地球の【場】を思いやることが、自分の命を守ること……現代社会の鉄則なのですね。

 日常生活における「虚空」との交流が大切になってくる、私達はそんな時代を生きているように思うのです。 私どもでは、呼吸を「虚空との交流」ととらえ、「美と健康」の仕事を推進させていただいています。
*吸う息……「虚空」の秩序性の高い【場】の情報を体内に取り込みます。
*吐く息……体内の「生命場」の情報を「虚空」に伝えます。

 大自然のエネルギーをいただくことによって、「元気の力」を養い整える道が開けてまいります。

参考文献:
白駒妃登美『子どもの心に光を灯す日本の偉人の物語』致知出版社
川崎宏編『勝海舟/勝小吉 氷川清話・夢酔独言』中公クラシックス
村野守治『島津斉彬のすべて』新人物往来社