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宇宙情報

第37回 龍村 仁さん

龍村仁監督が語る
「地球交響曲 第八番」の世界



「地球交響曲(ガイアシンフォニー)」は、イギリスの生物物理学者ジェームズ・ラブロック博士の唱えるガイア理論、「地球はそれ自体がひとつの生命体である」という考え方に勇気づけられた、龍村仁監督により制作されたオムニバスのドキュメンタリー映画です。今回で八作目となるシリーズの生みの親である龍村監督にお話を伺いました。

一見ネガティブに思えた先のあらたなる終着点「日本」

 この作品の「樹の精霊」の声に耳を傾けるというコンセプトは、いくつかの重なり合う、ネガティブともとれるシンクロニシティのなかで誕生しました。
 それは、「第七番」が出来上がった直後に起きた東日本大震災であり、また、その半年後に紀伊半島を襲った台風12号による豪雨災害でした。
 もともと、「地球交響曲」は、綿密な計画も、つくり続けようという意思もなく、毎回、「これで終わりだ」と思って制作してきました。「第一番」〜「第七番」は、ほぼ、観ていただいた前作の興行収入を事務所の維持と次の制作に使うというお金の循環のなかで続いてきたのです。「第七番」も同様に制作し、上映を開始しようというタイミングで、一連の天災が起きました。
 そこで、流れは一変。予定されていた上映会のキャンセルが相次ぎ、収益は激減、先のことはまったく見えなくなりました。負のスパイラルのように見える流れが「第八番」の制作につながっていくのですが、いままでとは違う展開が待っていました。
 流れにまかせていると浮き上がってきたのは、日本人の「本質」や「精神性」でした。これまでは、主に日本人一人と外国人数人という組み合わせでしたが、今回は樹の精霊の声に耳を傾ける素晴らしい日本人だけの姿を取り上げる構成に変わりました。ご登場いただく専門家たちが、樹と共に、再生の一歩を踏み出すまでを描く作品が生まれていったのです。
 一見ネガティブな流れにみえることも、私たちの意識次第で乗り越えていけると感じています。
 制約は智慧を生み、あらたなる進化につながる。なるがままに導かれていくような流れでした。

「生かされている」。
 日本人は樹との関係においてその感性をもっている

 「第八番」のはじめは、奈良県吉野山中の天河大辨財天で600年間眠り続けてきた能面「阿古父尉」を復元させるストーリーです。樹に宿る精霊と向き合いながら能面を甦らせていく過程や、代々受け継がれてきた自然を畏れ敬うご神事を通して、日本人が古来、目には見えない大切なものと、どのように対話を重ねてきたかを描いています。そして、気仙沼で牡蠣の養殖を続けながら、長年、森に樹を植える活動を続けてきた畠山重篤さん、信さん親子。最後に、ヴァイオリンの名器、ストラディヴァリウスの修理も請け負う中澤宗幸さん。樹の精霊と対話しながら、精霊の「声」までも甦らせるお気持ちで取り組まれています。震災の瓦礫や流木で「津波ヴァイオリン」を制作し、明治神宮で奉納演奏が行われるまでを密着、撮影させていただきました。
 「目に見えないので実在することは証明できないけれど、樹には精霊が宿っていて、それが危機の時に再生し、大切なことに気づかせてくれる…。」そう感じて、樹にまつわる日本人の精神文化を表現できる人物を探す中で、数々の出会いがありました。
 生命体が「地球」という惑星に生まれて何億年も生き続けていられるのは、樹をはじめ植物のおかげだということが科学的に証明されています。地球の大気圏をつくっているのも植物ですし、大気中の酸素を何億年にもわたって約21%に保っているのも、樹を中心とした植物です。
 この映画をご覧いただき、専門家が自らの感性で語る言葉の響きに耳を傾けたとき、自然に樹の精霊の存在を感じることができるでしょう。
 「第八番」で、樹の精霊の声、すなわち宇宙の声を感じていただければうれしいです。地球本来の全ての生命が健やかに末永く生き続けることを願っています。

※2015年9月5日開催 地球交響曲第八番 上映会用チラシより引用

(文責:瀬口 彩子)



< 龍村 仁(たつむらじん)さん プロフィール >
京都大学文学部美学科卒業後、NHK入局。報道局東京オリンピック中継担当を経て教育局教養班に配転、主にフィルムドキュメンタリーを演出。インディペンデント・ディレクターとしてドキュメンタリー、ドラマ、コマーシャルなど、数多くの作品を手がける。セゾングループ3分CMの「ライアル・ワトソン篇」「野口三千三篇」でACC優秀賞受賞。それをきっかけに、ドキュメンタリー映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』を監督。全国各地で自主上映会が開催されている。

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